その5ではA型スラブ軌道の試験線と初期型を紹介します。
A型スラブ軌道は現在も改良を重ねながら採用されているスラブ軌道の実質的な標準構造です。
↑全国で見られるA型スラブ軌道。防振型や枠型を含めバリエーションは多岐に渡ります。
この形態になるまでにいくつもの試験線が敷設され、検証結果が反映されていきました。
開発当初は勾配や曲線半径等の線路条件により、A-151~A-153型の3種類を使い分ける想定をしていましたが、後々にA-153(A-55)をベースとした突起有り・タイプレート式に一本化されていきます。
総武快速線中川放水路橋梁の下り線に敷設されているA-151型は半径800m以上、勾配10‰以上の区間向けに開発されたスラブ軌道です。在来線のスラブ軌道としてはえちごトキめき鉄道(旧北陸本線)の浦本トンネルに続いて2番目に古いもので、昭和44年(1969年)12月に敷設された試験線です。
座面式の締結装置が採用されているため軌道スラブの長手方向に溝が掘られています。
ここの締結装置の形状は圧縮スプリングを用いたあまり見かけないものでした。
ちなみに隣の上り線はL型です。異なる形式のスラブ軌道が並ぶ光景も試験施設ならでは
常磐緩行線の綾瀬-亀有間にあるA-151型試験線は昭和45年(1970年)7月に敷設されました。
この区間の架線にはエアセクションが設置されているため迂闊に停車出来ませんね。
単線区間のため前面展望か後面展望でないと線路状態を確認できません。
圧縮されていますが、締結装置は板バネを用いた直結4形という座面式でよく見られる形状。
中川放水路橋梁と同時期の施工ということもあり、その他の変更点は特に無さそうです。
スラブ軌道が長距離に渡って敷設されたのは山陽新幹線の岡山-博多間が最初です。
新幹線向けの標準軌・60kgレール用のA-51型とA-55型が設定されました。A-51型はA-151型ベースの座面式でトンネル用、A-55型はA-153型ベースのタイプレート式で明かり区間用として敷設されています。
新大阪-岡山間のスラブ軌道率は僅か5%ですが、その中でも姫路駅構内と姫路-西明石間の長坂寺高架橋にはA-51型の防振A形スラブ軌道の試験線が敷設されています。↑長坂寺高架橋、↓姫路通過線
どちらも平板スラブ用の薄型逸脱防止ガードが設置されています。
A-51型とA-55型は寒冷地向けに改良を加えられ東北・上越新幹線の80~90%もの区間に適用されています。保守基地にて研修用と思われるA-51型とA-55型の並びを見ることが出来ました。
手前がA-55型、奥がA-51型。座面式のA-51型の方が軌道スラブの厚みがありますね。
A-51型の直結4形締結装置は調整幅が少なく、通りが狂いやすい区間では整備が大変なんだとか
武蔵野線の新小平駅と前後区間にはA-152型が昭和48年(1973年)に敷設されました。
A-152型は半径800m以上、勾配10‰以下の線路条件で使用されることを想定した設計です。
スラブ相互間の突起を無くし、底面に設けられた凹みによりスラブの移動を防止しています。
締結装置は座面式の直結4形。上り線には何故か2枚だけA-153型も紛れていました。
余談になりますが新小平駅は1991年の水没事故により新秋津方の軌道が破壊されたため、復旧の際にバラスト軌道へ変更されています。擁壁などに駅構造物が隆起した痕跡が今も残っています。
新大阪の新幹線ホーム25・26番線は昭和49年(1974年)12月から共用が開始されました。
突起が無くA-152型に見えますが、締結装置はタイプレート式の直結8形(直結5形の改良版)です。
開業初期の21~24番線は直結軌道、1985年に増設された20番線はA-55型、2013年に増設された27番線は弾性枕木直結軌道ということで、施工時期に開きがあるため見事にバラバラなのが面白いです。
p.s.スラブ軌道-3に上野を、スラブ軌道-4に中川放水路橋梁を追加しました。
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