7回目となったスラブ軌道の記事ですが、今回は枠型スラブ軌道の話をしたいと思います。
スラブ軌道の進化と共に登場した枠型スラブ軌道ですが、平板スラブと比較して軽量で表面と内部の温度差に起因するソリが少ないなどメリットが多くあります。そんな枠型スラブ軌道の歴史を振り返ってみたいと思います。枠型スラブの中で最も古いのは1960年代に登場したL型スラブ軌道(L-150形)でしょう。
L型はレール直下に帯状の緩衝材を配置し、軌道スラブを支持する構造をしています。軌道スラブは4ヵ所ほど開口部があるラダー状で、外側も路盤から浮いていることからレール直下のみで支持していることが良く分かります。また、突起コンクリートが矩形な点も主流のA型とは異なります。このL-150形はえちごトキめき鉄道の浦本トンネルと総武本線の中川放水路橋梁に試験敷設されています。
その後、軌道スラブの軌間内を大きくくり抜いた枠型スラブが登場します。
1971年に関西本線の朝日駅構内にスノーフリーの枠型スラブ軌道SA-155形が敷設されました。
SA-155形はコンクリート桁直結軌道に挟まれる形で敷設されており、軌道スラブの周囲は鉄板で覆われています。スノーフリーを謳うくらいですから、桁にも開口部があるのか気になるところです。
下の写真が枠型スラブの両端にあるコンクリート桁直結軌道。こちらも枠型となっています。
また、朝日駅から少し離れた本線上には土路盤向けRA-116形も敷設されていましたが、近年バラスト軌道化されています。恐らく米原のように軌道スラブの沈下サイクルが短くなったのではないかと思われます。
1972年、羽越本線の金浦-仁賀保間の複線化に伴い、260mほどスラブ軌道が敷設されました。
そのうち白雪川鉄橋についてはSA-145形とSA-155形が敷設されています。
SA-145形は全長4mで締結具が片側7個、SA-155形は全長5mで締結具が片側8個です。
横から見るとL型のようなラダー状のスラブに見えますが、これは枠の中に枕木のような台を載せているためです。恐らく転落防止の金網を設置するために設置したと思われます。開床式の軌道構造は降雪時の除雪作業軽減に貢献しそうですね。
1994年に開業した関西空港線は様々な省力化軌道の試験線が敷設されています。
スラブ軌道は平板スラブ、平板防振スラブ、枠型スラブの3種類が敷設されました。
平板スラブと枠型スラブの境界を捕らえることができました。枠型スラブは平板と比べ幅がやや狭く、中央に開口部を設けることで建設費と材料費削減を実現しています。また、緩衝材のCAモルタルは不織布のロングチューブに入れるロングチューブ工法が採用され、CAモルタルの注入量の削減と施工性の向上を実現しています。防振スラブは防振マットの弾性により外側のCAモルタルの剥がれが顕著だったようですが、ロングチューブ施工法はそのような症状に見舞われる心配もありません。
前述の枠型と比べると中央枠の四隅にC面が追加されていますね。応力集中を防ぐためでしょうか
また、突起と軌道スラブの間のてん充層には合成樹脂が採用されているため白っぽく見えます。
こちらも平板スラブで採用されているCAモルタルは敷設後20年経過後にヒビ割れが発生していたのに対し、健全な状態を維持していることが確認されています。
愛知環状鉄道は1988年に開業した第3セクターですが、元々国鉄から引き継いだ区間もあることから軌道も国鉄/JRに準じた構造が採用されています。
特に2004年の愛知万博輸送に備え複線化された区間ではロングチューブ施工の枠型スラブ軌道が採用されています。この時期になると弾性枕木直結軌道なども登場していますが、既に路盤には突起コンクリートが打設済みであったため、スラブ軌道が採用されました。ただ、関西空港線の例のように平板より枠型の方がメリットが大きいため採用に至ったようです。開口部のバラストは騒音対策で散布されています。
トンネル内はレール締結部に凹凸のある見慣れない枠型スラブが敷設されていました。
私鉄の標準軌用スラブでは見かけますが、狭軌の枠型でこのタイプは他に見たことがありません。
量産された枠型スラブ軌道は次回に続きます。
クリックお願いします
↓ ↓ ↓