その4では実用化に至るまでに開発された試作のスラブ軌道を紹介します。
東海道新幹線と言えばバラスト軌道が印象的ですが、実はごく一部区間にスラブ軌道が採用されています。
元々省力化が目的のスラブ軌道は新規開業となる新幹線に採用することで費用対効果が大きくなりますが、東海道新幹線の建設当時はまだ開発途上であったことなどから本格的な採用は見送られています。
スラブ軌道の開発にあたってM形、L形、A形の3種類が検討され、それぞれ試作・試験を実施しました。
名古屋駅14番線の新大阪方にはM形スラブ軌道とL形スラブ軌道(推測)が敷設されています。
M形は軌道スラブをビームとして4点で支持し、1枚1枚を橋渡しにした構造をしています。
この試験線は1967年(昭和42年)7月に敷設されたもので、営業線における最古のスラブ軌道となります。
受台には4つの突起を設けてスラブの移動を抑制し、下面にCAモルタルを挟むことで弾性を有しています。
M形スラブ軌道の隣は直結軌道となり、その先にまた違う構造のスラブ軌道が現れました。
このスラブ軌道はL形と思われます。推測の域を出ないのはL形がレール直下を2本の帯状の緩衝材で支持する構造ということしか分からず、外見の判断が付かないためです。L形については現在も調査中です。
一見するとラダー状の枠型スラブ軌道に見えますが、枠内を埋められているのが特徴的です。
また、軌道スラブの両脇にある四角錘の存在も気になるところです。
岐阜羽島駅の下り通過線にも試験線があります。こちらは4ヵ月遅れの1967年11月に敷設されました。
このスラブ軌道では200km/h 以上の高速走行に対する安全性と耐久性が試験されています。
M形の受台は名古屋のものと支持構造が異なり、1つの突起で保持していました。また受台の幅が大きくはみ出していて、軌道スラブと突起の間には左右用マットと前後用マットが挟まれています。
突起の両脇にある竹とんぼみたいな金具は軌道スラブの浮き上がりを防止する板バネです。
米原方はL形となっていました。どちらの形式も締結装置が収まる部分は溝が掘られています。
こちらは名古屋と全く同じ構造のように見えますね。ここには写っていませんが四角錘もありました。
名古屋のように直結軌道を挟んでいないのでM形とL形の接続部を観察できます。M形の軌道スラブは梁としての強度を持たせているためかなり分厚くなっています。また軌道構造としての性能は十分あるものの、受台の支承構造が複雑で経費が高くつくことや使用箇所の制限があるといった欠点がありました。
また、L形についても下部構造に線状の支持台を設ける必要があり、この支持台を精度よく生産することが難しいと考えられました。その後、緩衝材としての弾性や耐久性に優れたCAモルタルが開発されたことによって、軌道スラブ全面をCAモルタルで支えるA形が標準構造として採用されていきます。
この前下り列車で岐阜羽島を通過する際、一瞬だけ走行音が大きくなることに気が付きました。
気になる方は耳を傾けてみてください。
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